<言葉のセクハラ>処分は妥当…管理職の敗訴確定 最高裁 続き - じょうばん法律事務所 弁護士のブログ<茨城県取手市> 詐欺サイトと日々戦っています。
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<言葉のセクハラ>処分は妥当…管理職の敗訴確定 最高裁 続き

最高裁の判決文がアップされていますね。→こちら

こういうアップをする仕事の人もいるんですねぇ。

せっかくなので、この判決文を見ていこうと思います。

ところどころ抜粋していきます。

1 本件は,上告人の男性従業員である被上告人らが,それぞれ複数の女性従業
員に対して性的な発言等のセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」とい
う。)等をしたことを懲戒事由として上告人から出勤停止の懲戒処分(以下「出勤
停止処分」という。)を受けるとともに,これらを受けたことを理由に下位の等級
に降格されたことから,上告人に対し,上記各出勤停止処分は懲戒事由の事実を欠
き又は懲戒権を濫用したものとして無効であり,上記各降格もまた無効であるなど
と主張して,上記各出勤停止処分の無効確認や上記各降格前の等級を有する地位に
あることの確認等を求めている事案である。


ものすごく簡単に言ってしまえば、

セクハラ発言をして出勤停止になりました。さらにその出勤停止のせいで降格になりました。
出勤停止と降格はあまりにも重いので、無効であると認めてください。
という訴えです。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

被上告人X1は,平成3年に上告人に入社し,同21年8月から営業部サービス
チームのマネージャーの職位にあり,同24年3月当時,上告人の資格等級制度規
- 2 -
程(以下「本件資格等級制度規程」という。)に基づき,M0(課長代理)の等級
に格付けされていた。
被上告人X2は,平成4年に上告人に入社し,同22年11月から営業部課長代
理の職位にあり,同24年2月当時,本件資格等級制度規程に基づき,M0の等級
に格付けされていた。


この事件、従業員側は2人関わっているんですね。
お二人とも、それなりのポジションにいたようです。

(3) 平成23年当時,上告人の従業員(管理職,正社員,派遣社員等を問わ
ず,上告人の事業所において勤務する者をいう。以下同じ。)の過半数は女性であ
り,本件水族館の来館者も約6割が女性であった。
また,上告人は,職場における
セクハラの防止を重要課題として位置付け,かねてからセクハラの防止等に関する
研修への毎年の参加を全従業員に義務付けるなどし,平成22年11月1日には
「セクシュアルハラスメントは許しません!!」と題する文書(以下「セクハラ禁
- 3 -
止文書」という。)を作成して従業員に配布し,職場にも掲示するなど,セクハラ
の防止のための種々の取組を行っていた。


従業員・客の両方で女性が多い職場だったようです。
そのためなのか、会社としてはセクハラ防止措置に取り組んでいたことも分かります。

セクハラ禁止文書には,禁止行為として「①性的な冗談,からかい,質
問」,「③その他,他人に不快感を与える性的な言動」,「⑤身体への不必要な接
触」,「⑥性的な言動により社員等の就業意欲を低下させ,能力発揮を阻害する行
為」等が列挙され
,これらの行為が就業規則4条(5)の禁止する「会社の秩序又は
職場規律を乱すこと」に含まれることや,セクハラの行為者に対しては,行為の具
体的態様(時間,場所(職場か否か),内容,程度),当事者同士の関係(職位
等),被害者の対応(告訴等),心情等を総合的に判断して処分を決定することな
どが記載されていた。上告人において,セクハラ禁止文書は,就業規則4条(5)に
該当するセクハラ行為の内容を明確にするものと位置付けられていた。


性的な発言だけであってもセクハラに該当するし、
そのセクハラがあったら会社は処分するからねということが明示されていた、ということです。

(5) 被上告人らは,従業員Aらに対し,平成22年11月頃から同23年12
月までの間に,少なくとも別紙1(被上告人X1の行為一覧表)及び同2(被上告
人X2の行為一覧表)のとおりの行為(以下「本件各行為」という。)をした。


ここがポイントとなるセクハラです。

では、そのセクハラ行為はどのようなものだったかというと。

(別紙)
別紙1 被上告人X1の行為一覧表
1 被上告人X1は,平成23年,従業員Aが精算室において1人で勤務してい
る際,同人に対し,複数回,自らの不貞相手と称する女性(以下,単に「不貞相
手」という。)の年齢(20代や30代)や職業(主婦や看護師等)の話をし,不
貞相手とその夫との間の性生活の話をした。
2 被上告人X1は,平成23年秋頃,従業員Aが精算室において1人で勤務し
ている際,同人に対し,「俺のん,でかくて太いらしいねん。やっぱり若い子はそ
の方がいいんかなあ。」と言った。
3 被上告人X1は,平成23年,従業員Aが精算室において1人で勤務してい
る際,同人に対し,複数回,「夫婦間はもう何年もセックスレスやねん。」,「で
も俺の性欲は年々増すねん。なんでやろうな。」,「でも家庭サービスはきちんと
やってるねん。切替えはしてるから。」と言った。
4 被上告人X1は,平成23年12月下旬,従業員Aが精算室において1人で
勤務している際,同人に対し,不貞相手の話をした後,「こんな話をできるのも,
あとちょっとやな。寂しくなるわ。」などと言った。
5 被上告人X1は,平成23年11月頃,従業員Aが精算室において1人で勤
務している際,同人に対し,不貞相手が自動車で迎えに来ていたという話をする中
で,「この前,カー何々してん。」と言い,従業員Aに「何々」のところをわざと
言わせようとするように話を持ちかけた。
6 被上告人X1は,平成23年12月,従業員Aに対し,不貞相手からの「旦
那にメールを見られた。」との内容の携帯電話のメールを見せた。
7 被上告人X1は,休憩室において,従業員Aに対し,被上告人X1の不貞相
手と推測できる女性の写真をしばしば見せた。
8 被上告人X1は,従業員Aもいた休憩室において,本件水族館の女性客につ
いて,「今日のお母さんよかったわ…。」,「かがんで中見えたんラッキー。」,
「好みの人がいたなあ。」などと言った。
以上

別紙2 被上告人X2の行為一覧表
1 被上告人X2は,平成22年11月,従業員Aに対し,「いくつになった
ん。」,「もうそんな歳になったん。結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣く
で。」と言った。
2 被上告人X2は,平成23年7月頃,従業員Aに対し,「30歳は,二十
二,三歳の子から見たら,おばさんやで。」,「もうお局さんやで。怖がられてる
んちゃうん。」,「精算室に従業員Aさんが来たときは22歳やろ。もう30歳に
なったんやから,あかんな。」などという発言を繰り返した。
3 被上告人X2は,平成23年12月下旬,従業員Aに対し,Cもいた精算室
内で,「30歳になっても親のすねかじりながらのうのうと生きていけるから,仕
事やめられていいなあ。うらやましいわ。」と言った。
4 被上告人X2は,平成22年11月以後,従業員Aに対し,「毎月,収入ど
れくらい。時給いくらなん。社員はもっとあるで。」,「お給料全部使うやろ。足
りんやろ。夜の仕事とかせえへんのか。時給いいで。したらええやん。」,「実家
に住んでるからそんなん言えるねん,独り暮らしの子は結構やってる。MPのテナ
ントの子もやってるで。チケットブースの子とかもやってる子いてるんちゃう。」
などと繰り返し言った。
5 被上告人X2は,平成23年秋頃,従業員A及び従業員Bに対し,具体的な
男性従業員の名前を複数挙げて,「この中で誰か1人と絶対結婚しなあかんとした
ら,誰を選ぶ。」,「地球に2人しかいなかったらどうする。」と聞いた。
6 被上告人X2は,セクハラに関する研修を受けた後,「あんなん言ってたら
女の子としゃべられへんよなあ。」,「あんなん言われる奴は女の子に嫌われてい
るんや。」という趣旨の発言をした。
以上


多すぎ。

こんなに具体的になっているというころは、録音でもしていたのでしょうね。

という事実のもとで、出勤停止処分が重すぎたかどうかが争われたのがこの裁判です。
事実関係そのものは、とてもシンプルなものだと思います。

客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合に当たるかどうかが判断基準なんですが、もっと簡単に言えば、

やってしまったことに対して、処分が重すぎるか
というふうに考えれば、ほぼ誤りはありません。

つまり、
・やってしまったことが軽微なら、処分も軽微であるべき

・やってしまったことが重いなら、処分も重くていい
ということです。

すこ~しずれるのですが、犯罪に対する刑罰とかなり似ています。


では、処分が重すぎると判断した高等裁判所はどう考えたのでしょう。

(1) 前記2(5)のとおり被上告人らは本件各行為を現に行ったものと認められる
ところ,被上告人らがこれらの行為を行ったことは,セクハラ禁止文書の禁止する
セクハラ行為など会社の秩序又は職場規律を乱すもの(就業規則4条(5))に当た
り,会社の服務規律にしばしば違反したものとして,出勤停止等の懲戒事由(就業
規則46条の3)に該当する。


こんなの当たり前。

問題は重すぎると判断した部分です。見ていきます。

しかし,被上告人らが,従業員Aから明確な拒否の姿勢を示されておら
ず,本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していた
ことや,被上
告人らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人の具体的な方針を
認識する機会がなく,本件各行為について上告人から事前に警告や注意等を受けて
いなかった
ことなどを考慮すると,懲戒解雇の次に重い出勤停止処分を行うことは
酷に過ぎるというべきであり,上告人が被上告人らに対してした本件各行為を懲戒
事由とする各出勤停止処分は,その対象となる行為の性質,態様等に照らして重き
に失し
,社会通念上相当とは認められず,権利の濫用として無効であり,上記各処
分を受けたことを理由としてされた各降格もまた無効である。


①嫌がっていると思ってなく、勘違いしていたからしゃーない。悪気がない。

②注意されたことがない。処分する前に、注意するとかあるでしょうよ。いきなり出勤停止はないわ~。

というところが重視されています。

これらの点を考えれば、いくらセクハラがあったとしても、処分は重すぎるという判断です。

結局のところ、重いか相当かっていうのは価値観次第です。
法律でずばっと決まっているわけではないですからね。
過去の判例から推測するしかないのです。

①の理由はひどいですね。
抵抗しなかったから強姦じゃない的な。
従業員側としては当然主張するところですが、まさか通るとは思わないだろうな・・・。

被害に遭った従業員の方とセクハラ従業員の立場を考えれば、
はっきりと拒否できない、拒否しにくいことくらいわかるでしょうに。

②もこんな判断に至った理由が全く分からない。
会社はしっかりと対策していたように思いますけど。


そして、最高裁の判断は・・・

このように,同一部署内において勤
務していた従業員Aらに対し,被上告人らが職場において1年余にわたり繰り返し
た上記の発言等の内容は,いずれも女性従業員に対して強い不快感や嫌悪感ないし
屈辱感等を与えるもので,職場における女性従業員に対する言動として極めて不適
切なものであって,その執務環境を著しく害するものであったというべきであり,
当該従業員らの就業意欲の低下や能力発揮の阻害を招来する
ものといえる。


まず、セクハラ行為自体がかなり重い、と。

そして,従業員Aは,被上告人らのこのような本件各行為が一因となって,本件
水族館での勤務を辞めることを余儀なくされている
のであり,管理職である被上告
人らが女性従業員らに対して反復継続的に行った上記のような極めて不適切なセク
ハラ行為等が上告人の企業秩序や職場規律に及ぼした有害な影響は看過し難いもの
というべきである。


発生した被害も甚大だということですね。

(2) 原審は,被上告人らが従業員Aから明白な拒否の姿勢を示されておらず,
本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していたなどとして,これ
らを被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが,職場におけるセクハラ行為
については,被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも,職場
の人間関係の悪化等を懸念して,加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被
害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられる
こと
や,上記(1)のような本件各行為の内容等に照らせば,仮に上記のような事情があ
ったとしても,そのことをもって被上告人らに有利にしんしゃくすることは相当で
はないというべきである。


嫌だと思っていてもなかなかそうはっきりと言えないんだから、
被害従業員がはっきり嫌だと言わなかったことは、言い訳にならないと。

こんなの当たり前でしょ~?


で、ここで判例の引用は終えますが、結論としては出勤停止処分は重すぎないから有効です、という判断に至ったわけですね。

じゃあ、これが懲戒解雇だったらどうだったのかというのは本当に難しい。

懲戒解雇というのは労働者にとっての死刑なので、出勤停止処分よりは無効となりやすいです。

重い処分を受けたら、労働審判や訴訟を視野に入れた方がいいです。
特に解雇は。
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コメント

非公開コメント

海遊館のホームページをみても、とくにこの事件には触れていないようですね。
ちょっと前の、名古屋大学の学生逮捕のときは、大学のHPに「大学からのお知らせ」が掲載されていましたが。
それぞれの企業等の取り組み方・考え方の違いが、かいま見られます。

Re: タイトルなし

しんじ様

お返事遅くなりました。
おそらくはまだ勤務し続けることもあって、慎重になっているのかも。
学生相手か社会人相手かってところもあるのかもしれませんね。